ラブコメ要素やミステリー要素の強い漫画ですが、出て来る薬の知識は古風な薬学知識になります。肩の力抜いて漫画を通じて薬の勉強するのもいいかもしれません。
ちなみに、厚生労働省の電子処方箋推進のタイアップとして「薬屋のひとりごと」を使うという発表がありました。
高級白粉(おしろい)によって毒殺は実際にあった
高級白粉(おしろい)を妓女が妃に使用し、お乳をあげている子供から衰弱し、次第に妃も衰弱していくシーンがありました。
猫猫(まおまお)がまだ薬師(やくし)と知られる前に内緒で文に書いて後宮専属医の診断ミスをつきます。
江戸時代後期に白粉(おしろい)の毒で死亡するケースがあった
江戸時代後期に鉛白粉の毒によって死亡するケースがあったそうです。
白粉塗るだけで毒殺できるの?って思うかもしれませんが、実際には経皮吸収といって皮膚からの吸収はそれなりにあります。
乳母が乳を飲ませた子に最初に症状が出るケースが多いそうです。
上流階級に特徴的だったのが、白粉による鉛中毒の症状でした。そこに仕える乳母は、鉛を含んだ白粉を顔から首や胸にかけて塗っていたので、乳房を介して白粉を舐めた乳幼児が、貧血・消化不良を起こし、中には脳膜炎の症状が出て死亡する例も見られました。
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/29/1.html#:~:text=%E6%B1%9F%E6%88%B8%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%80%81%E3%81%AF%E3%81%97%E3%81%8B%E3%82%84,%E3%82%82%E8%A6%8B%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
江戸時代にあった事柄ですが、作者の日向夏さんのコメントにあるように科学的知識は十九世紀ごろまでのものが入ってくるそうです。
ファンタジーですので、実在の国ではありません。
モデルは唐代、楊貴妃の時代を中心に衣服や花街、後宮はイメージ。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/183213/blogkey/2103547/
文化レベルは、十六世紀ごろにしておりますが、話のネタ的に、紙不足にさせたりすることもあれば、科学的知識は十九世紀ごろくらいまでなら使うようにしています。
ネタがなくなるので。
薬剤師として考えるべきは経皮吸収は侮(あなど)れないなということ
経皮吸収ということに関連してですが、湿布や軟膏といったものの吸収量も侮れません。
湿布薬について全身作用はないと説明している薬剤師の方も多いかと思いますが、一度に4枚以上貼っていくと全身作用を考慮しなければなりません。
また、軟膏についてもラップなどを上から貼って蓋すると経皮吸収量が高まるので全身の副作用が起こる可能性があります。
鉛中毒について
人格の変化、頭痛、感覚の消失、脱力、口の中の金属味、歩行の協調障害、胃腸障害、貧血が起こることがあります。
毒見する時のしぐさについて5味、5色、5臭を確認
主人公が毒見するときに、色・匂い・味を確認しています。
中医学では五感を使って生薬の作用を推定することを行っておりました。
中国では5行説と言って、全ては5つの要素で成り立っていると考えられています。
神農本草書は自らの体を使って毒物と薬物を発見した
神農はさまざまな草木を自ら食し、毒に当たったときは薬草で治癒しということを繰り返してさまざまな毒物と薬物を調べていきました。
色、匂い、味などから何に効くのか、どういう臓器に作用しそうであるかなどを推定していきました。
純粋なヒ素は銀食器に反応しないが当時の硫砒鉄鋼は銀食器に反応した
当時のヒ素の精錬技術が足りなかったため、毒物には砒石が用いられていました。
この砒石の硫黄に銀が反応して黒色となるようです。
↓のサイトで詳しく説明されています。
毒を少量ずつ使用すると毒の耐性がつく
実際に蛇毒を何回も試していると毒の耐性がつくこの原理を利用して血清が作られている
毒を少量ずつ投与していくとだんだん耐性がついていきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%93%E6%AF%92
毒蛇の毒も少量ずつ体内に接種しているとやがてそれに免疫が反応する様になり、自己体内で解毒抗体ができるようです。
また、中国での漢方薬の用量は日本の2−3倍の量の用量となっています。
中国人はお酒も強いし、薬物の代謝能力も高いのです。
これは普段から漢方薬を服用しているから多少の薬物では効きにくくなっているようです。
塩で毒殺は可能なのか・・・
体重1kgあたり0.5~5gが塩化ナトリウムの致死量
食塩の主成分は塩化ナトリウムです。塩化ナトリウムのヒト推定致死量は体重1kgあたり0.5~5gとされています。※1※2
https://www.shionavi.com/salt/lethal-dose
つまり、体重60kgのヒトの場合、30~300gの塩を一度に摂取すると死に至るおそれがあるということです。脳や様々な臓器に影響を与える中毒量はもっと少なく、体重1㎏あたり0.5~1gのため、体重60㎏の人では、30g~60gの摂取で深刻な問題をきたします。
これだけの量の食塩を一度に食べるのは現実離れしているので、食塩を致死量まで摂るのはなかなかイメージしにくいかもしれません。
https://www.shionavi.com/salt/lethal-dose
しかし、食塩は1Lの水に約300g溶かすことができます。※3
水に溶かしてしまうと、一度に致死量に達する食塩を摂取するというのもあり得ないことではないのです。
塩を何かに溶かして多く与え続けていると可能ではあるようです。
血中Na濃度は高くても低くてもダメ
臨床の現場で普段から塩分で気になるのはどちらかというと血中Na濃度が低下して低ナトリウム血症が気になるとおもいます。
もしくは塩分が多くて血圧が高めだよとか。
OS-1もNaが多めであり腎機能が悪い方には飲み過ぎは禁物です。
ニュースなどでは取り上げられていない問題があります。
それは、塩分量の多さです。心臓や腎臓の持病がある方や高齢者に対しては、実は思わぬ合併症を招くおそれがあり注意が必要です。
介護施設でも、「水分補給といえば、OS-1®」と考え高齢な入居者さんへ安易に提供しているところも多いですが、飲む方の心臓や腎臓などの全身状態を把握した上ですすめるべきです。
https://www.ys-med.com/os-1%E3%81%A8%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85/
チョコレートにはカカオという媚薬が入っている
歴史的にはチョコレート(カカオ)は媚薬から始まったが実際には効果なし
媚薬としての効果があるのではと昔は思われていたそうですが、結論からいうと媚薬としての効果はないそうです。
チョコレートは異性に好意を持ったり、何かに集中したりしているときに脳下垂体から分泌される「PEA(フェニルエチルアミン)」が含まれるものの、濃度が低すぎて行動に影響を及ぼすものではないと報告されています。
つまり、チョコレートの歴史ではチョコレートが媚薬のように言われることがありますが、科学的にはチョコレートに媚薬効果はないと言えます。
https://hitokuchi.co.jp/pages/story-history?page=7
中医学では気を補う作用があるので疲れた時に元気が出る
気を補い、疲労回復に期待できるのですが、砂糖が多すぎると中医学では湿邪が溜まって良くないそうです。
なのでダークチョコレートなどカカオが多めのものを摂取した方が疲労回復に効果があるそうです。
下にある中医学での効能効果が期待できるかと思います。
1.補気益心 動悸、疲労、居眠りしやすい
2.利尿通淋 尿少、尿の出が悪い
気を補い、心臓疾患にいいようです。2番目の利尿作用もあるようです。
【科目】アオギリ科
https://www.ikanpo.jp/roppongi/2022/02/14/%E3%82%AB%E3%82%AB%E3%82%AA%E3%82%92%E4%B8%AD%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%8F%E8%BB%8A%E7%94%B0-%E5%85%89%E7%A9%82/
【別名】ココア カカオ、可可(中国)Cocoa(英)
【原産地】南アメリカ、メキシコ
【日本の産地】特になし
【収穫時期】産地のより異なるが、乾期と雨期の年2回
【属する部分】果実から採れる種子
【性味/帰経】平、甘、苦/肺、心、大腸、胃
【働き】
1.補気益心 動悸、疲労、居眠りしやすい
2.利尿通淋 尿少、尿の出が悪い
生姜と陳皮はどちらも体を温める
園遊会では生姜と蜜柑の皮=陳皮の飴を作って持っていくかと思います。
この両方に体を温める作用があります。
香蘇散 (こうそさん)は主薬ではないが生姜と陳皮の入った風邪薬
生姜と陳皮が含まれている有名処方として香蘇散 (こうそさん)という風邪薬があります。
高齢者向けの風邪薬ですので覚えておくと良いでしょう。
今のような鉄粉を酸化させるカイロはこの当時はまだなかった
当時は石を温めて衣に忍ばせるようなものしかなかったようです。
今のタイプのカイロが登場するのは昭和になってからのようです。
たまに思い出しておきたい懐炉(カイロ)の化学式
豆知識というか、学生の頃に戻った気分というか、たまに復習がてら覚えておきたいですね。
化学反応式では、
Fe(鉄)+ 3/4O2(酸素) + 3/2H2O(水) → Fe(OH)3(酸化鉄) + 熱エネルギー(温かくなる) となります。
鉄は空気中の酸素と反応して酸化鉄(錆)になります。この反応をするときに熱が発生しています。この熱を活用したのが、使い捨てカイロです。
フグ毒は解毒薬のない毒物である
テトロドトキシンは青酸カリの500から1000倍の毒性を示す猛毒であり、耐熱性があるため、通常の加熱調理では壊れません。
人間の致死量は、2から3ミリグラムであり、フグによって個体差があります。
解毒薬はありませんので呼吸管理などの処置しか行えません。
フグ毒が癖になる人がいる
猛毒であるフグ毒が癖になる場合があります。
痺れる感覚があったというのはどのような事でしょうか。
それは、口に入れた際に舌や唇に感じるピリピリとした感覚の事で、この感覚は中には癖になるという方もいるようです。
https://michinaka.jp/blog/1757
実際にこの痺れる感覚が好きになる方がいてそういう食べ方をしようとする場合があるようです。(絶対に危険なのでやめましょう)
イルカはふぐ毒を利用して楽しんでいる?!
水族館で出会う可愛いイルカさんたちですが、実はフグ毒の銘酔状態を楽しんでいることがあるようです。
フグ毒でハイになる?
そんな効果はありそうです。(危険なので絶対にやめましょう)
フグ毒の段階別症状
多分、主人公の猫猫(マオマオ)は第2段階くらいのを狙っているのかもしれませんがとても真似できたものではありません。
アナフィラキシーについても取り上げられていました
園遊会の食事を入れ替えることによって本来食べてはいけない青魚を食べてアナフィラキシーが出るシーンがありました。
アナフィラキシーは薬剤師誰もが知っている知識なので割愛します。
アナフィラキシーにはエピペン、なければ病院でアドレナリン注
確かに、毒にもなりうるし当時だったらエピペンとかもない状況なので困りますね。
個人的にはエピペンがちょっと品薄で困ります。
アナフィラキシーに対するわかりやすい初期対応マニュアルがありました。
薬局で出くわしたら救急搬送以外やることはありませんが、一応。
https://www.hosp.gifu-u.ac.jp/origin/allergy/medical_personnel/links/AnManualA4.pdfタバコ毒に関する救急処置
タバコ毒によって自殺に見せかけて緑青館(ろくしょうかん)のお客を殺す場面がありました。
タバコの乳幼児による誤飲事故は多く、その救急処置は諸外国に比べて日本は多いようです。
タバコを飲み込んだ場合の毒性
市販の紙巻たばこ1本中には、16〜24mgのニコチンが含まれています。ニコチンは非常に毒性が強く、成人の致死量は40〜60mg、幼児では10〜20mgです。
漫画同様に直接食べるより、水に溶かされている場合については毒を大量に摂取する可能性があります。
毒殺を疑い、水に最初から溶けていて大量摂取させられている可能性を探ってよかったと思われます。
たばこを食べてしまったことに気づいたら、吐き出させ、水分は与えない
牛乳などの水分をとると胃の中の酸性度が低くなってしまい、たばこの葉からニコチンが溶け出しやすい状態になってしまうようです。
ただし、毒殺のように最初から水に溶けていたとしたら水を飲まして薄める必要もあったかもしれません。
炭は今でも救急の現場で使用されています。
活性炭が通常は投与され,特に複数のまたは不明な物質を摂取した場合に投与される。
活性炭は,水または清涼飲料中のスラリー状態で投与する。
薬剤師としてはクレメジンの方が馴染みがある
腎不全の患者さんにクレメジンが出るかと思いますが、薬理作用は救急で使う活性炭と同様です。
慢性腎不全(腎不全)では老廃物などを排泄する腎臓の機能が低下していて、体内に毒素が残りやすい状態になっている。
活性炭には毒素を含む化学物質を吸着する作用がある。
活性炭を体内へ摂取すると、毒素が体内へ吸収される前に活性炭が毒素をあらかじめ吸着し、便と一緒に体外へ排泄する。
これにより体内に毒素が蓄積する尿毒症を改善することができる。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82f9.html
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