長期収載品の選定療養ってどういうこと?
また改定で薬局にめんどくさい説明を押し付けるの?
診療報酬改定があった後ですが、2024年10月から長期収載品の選定療養が始まります。
「ざっくりヒルドイドとかの値段が上がるのは知っているけど、詳しくどうなるのかまでは・・・」
という方に向けて、薬局薬剤師がやるべきこと、知っておくべきことをまとめてみました。
これを読めば、長期収載品の選定療養について大まかに理解できるようになると思います。
選定療養とは
保険外医療と保険医療を併用するルールのこと
保険外診療を無制限に導入してしまうと、保険外の負担が一般化されたり、科学的根拠のない特殊な医療の実施の助長が心配され、そのために作られたルールが選定療養となります。
混合診療(保険診療と保険外診療の併用)については、原則として禁止されており、全体について、自由診療として整理される。
その理由としては、いわゆる混合診療を無制限に導入すると、本来は、保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化 → 患者の負担が不当に拡大するおそれがあること。
安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまう → 科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長するおそれがあること。
そのため、病院などでは患者さんの自己負担額増額がされています。
たとえば、紹介状なしの大病院(200床以上)での初診、再診の場合は、金額まで定められており、初診では、
医科7000円以上、歯科5000円以上を、
再診では、医科3000円以上、歯科1900円以上を徴収すると定められています。
これは、大病院とそれ以外の医療機関の機能分担のため、大病院への初診・再診の集中を抑える狙いがあるとされています。
その選定療養の中で、医薬品に関して従来の先発品を使用すると自己負担額が高くなることが決まりました。
2024年10月から開始され、後発品と先発品の差額の4分の1の金額が高くなることとなります。
薬局においては、長期収載品(先発)を指定すると、後発品との差額の4分の1程度、患者負担が増えます。
長期収載品の選定療養で薬局が対応すること
新処方箋様式に「変更不可」と「患者希望」の二つを確認する
新処方箋様式には新しい項目が追加されています。
「変更不可」に(医療上必要)が追加されているのと、「患者希望」というのが追加されています。
この表記に対して以下の通りに薬局では対応します。
①「変更不可(医療上必要)」欄に「✔」または「×」を医薬品ごとに記載あり→この場合は保険給付の対象となり、選定療養の対象とはならない。
※医師が医療上の必要性があるため、後発医薬品に変更することに差し支えがあると判断した。
②患者の希望を踏まえて、長期収載品を銘柄名処方する場合には、
「患者希望」欄に「✔」または「×」を医薬品ごとに記載あり→選定療養の対象
③どちらも記載なし→患者さんが長期収載品を希望すれば選定療養の対象
後発医薬品を希望すれば保険給付
ただし、以下の場合は長期収載品であっても保険給付して良いことになります。
後発医薬品の在庫状況等により提供が困難であり、⻑期収載品を調剤せざるを得ない場合
剤形や効能・効果の差異等の理由で、後発医薬品では適切な服⽤が困難であり、⻑期収載品を服⽤すべきと薬局薬剤師が、判断した場合
以下の第一三共さんと武田テバさんの資料がわかりやすいです
選定療養の金額イメージ
正確には後発医薬品の最高薬価と先発品の差額の4分の1に消費税もかけた金額となります。
なかなかややこしいですね。
長期収載品のリスト
厚生労働省で公開しているリストになります。
PDFファイル
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247591.pdf
エクセルファイル
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247592.xlsx
選定療養が開始される2024年10月までにやるべきこと
- 長期収載品に関しては全て後発医薬品が調剤できるように在庫を確保する
- 在庫確保できないものは先発調剤でも保険給付の対象なので、先発のままで良い
- 病院側で選定療養の話をすることになってはいるが、患者さんから聞かれた時用に薬局でも説明できるようにはしておく
- 門前の病院と足並みをそろえるため、長期収載品の選定療養について相談しておく
小児も選定療養の対象
ヒルドイドを筆頭に問題となっていた保険給付での美容液問題があります。
今まで小児の先発利用は多かったのですが、お金がかかるとなると後発希望は増えそうです。
今のうちに後発医薬品を揃えておいた方がいいかもしれません。
問 12 医療保険に加入している患者であって、かつ、こども医療費助成等の
いわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を
希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答)長期収載品の選定療養の制度趣旨は、医療上必要があると認められる場合
等は、従来通りの保険給付としつつ、それ以外の場合に患者が長期収載品を
希望する場合は、選定療養の対象とすることとしたものであることから、今
般、対象外の者は設けておらず、こども医療費助成等のいわゆる地方単独の
公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合につい
ても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来通りの
保険給付として差し支えない。
特定薬剤管理指導加算3のロについて
疑義解釈など踏まえると、今回の選定療養の説明時に算定可能。
選定療養について確定するまでは日薬から慎重にと言われていましたが、もう算定して良いと思います。
特薬3のロの算定まとめ
選定療養で便利なツール
選定療養自動計算ツールがあります。
その他、気になる情報
レセプト記載事項について
公害医療、労災について
選定療養でも薬価差が少なすぎるのはどうするか
ヒルドイドのおすすめジェネリック
長期収載品の選定療養の案内文例
2024/08/22厚労省より疑義解釈追加があります。
注目すべきは以下のところ、門前病院の処方箋様式については事前に打ち合わせた方が良さそうです。
問4 令和6年 10 月1日以降に旧様式の処方箋で処方された長期収載品であって、後発品変更不可にチェックがあるものの、理由について記載がされていないものについてどう扱えばよいか。
(答)保険薬局から処方医師に対して疑義照会を行う等の対応を行うこと。
まとめ
- 選定療養とは: 保険外診療を無制限に導入することで、患者の負担が増えるリスクを防ぐためのルール。科学的根拠のない医療の実施も防止。
- 医薬品における選定療養: 2024年10月から、先発品を使用する場合、後発品との差額の4分の1を自己負担することになる。
- 新処方箋様式: 「変更不可(医療上必要)」や「患者希望」の項目が追加され、選定療養の対象かどうかを判断。
- 薬局での対応: 新処方箋様式に従い、長期収載品と後発医薬品の選択を説明。後発医薬品の在庫確保が必要。
- 長期収載品リスト: 厚生労働省で公開されているリストを参照。
- 小児の選定療養: 小児も対象となり、保険給付での美容液問題も含まれる。
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